ふと思い出す母のこと.....秋の日に

さわやかな秋風が、開け放った玄関から家の中へ.......

コスモスの花咲く庭を見渡しながら、ふと母のことを思い出す。

ふと.....いいえ、いつも母は心の中にいます。が、書いておこうと、今日は

思いました。

生きていた時には、いつも、対立ばかり........

絶対に母のようにはなりたくない........そう思っていました。

でも、母が高齢で寝込むようになってから.......母のお世話をし、話をするようになってから......ぶつかることもあったけれど、少しずつ、母を理解し始めました。

母のクモの巣だらけの部屋を掃除し、

古くて必要でなくなったものを、処分し、

タンスの中も整理し、

本棚を用意して、母の読みそうな本をそろえ....

網戸を自分で張り替えて......

長い間使っていなかったエアコンを動かし(リモコンを買って)....

ベットの耳元のラジオ調節し.........機械の苦手な母がワンボタンでon,off できるようにスイッチを設置し.......

母の好きな本を朗読してあげたり.......

国民唱歌を一緒に歌ったり......

次回の訪問までの間にやっておく「縫えり絵」の宿題を出したり......

その塗り絵を、部屋中に飾ったり........

思いで写真を、母のベットの脇にボードを設置して貼り付けたり........

施設に入ってからは、車いすで、歌を歌いながらお散歩したり......

あるとき、お散歩中に赤ちゃんを抱いた人とすれ違い、

かわいい赤ちゃんを見せていただいた時、いつも笑わない母が

声高に笑ったこと.......本当にびっくり........可愛かったんだね、うれしかったんだね。

下校時間に小学生を待ち伏せして.......握手を沢山してもらったこと.......

(小学生に高齢者と握手してくれないかとお願いするなんて、私らしいなあ......と、少々自画自賛......うっ?......)

施設の周囲を囲む山茶花の垣根の前では、

何度「山茶花山茶花咲いた道~♫」と歌ったことか.......

それが私の宝物........私にしかわからない宝物.........

他人とは分かり合えない、母と私の絆.......

母が、天国へ旅立つ10日くらい前の深夜.......

母のいる施設で夜中に.......私が母のベットの脇で横になっていると......

いつも起き上がれない母が、むくっと起きて、手を伸ばして.......

「ありがとう、ありがとう」と繰り返し、吐き出すように言いました。

忘れませんね、わすれられませんね、あの一瞬のできごと........。

私だけの秘密、宝物です。

人間は、こうやって終わるものなのか........と思いました。

今も、少し、涙がでそう.........

エリザベス女王二世に息子のチャールズ新国王が声をかけたように、

私も「母さん、ありがとう!」と言いたい、今日も。